搬送波（キャリア）の振幅を変化させ、振幅にデジタル情報を乗せるＡＳＫ（Amplitude Shift Keying）や、搬送波の周波数を変化させ、周波数にデジタル情報を乗せるＦＳＫ（Frequency Shift Keying）があります。
これ以外には、搬送波の位相を変化させ、位相に何らかの意味を持たせ、位相にデジタル情報を乗せる位相変調があります。
デジタル回路との相性が良い位相変調の変調方式の一つにＰＳＫ（Phase Shift Keying）があります。
搬送波の位相を変化させるＰＳＫ変調には、搬送波の２つの位相の変化だけで２値（２つの情報）を表すＢＰＳＫ（Binary Phase Shift Keying）と、４つの位相の変化で４値（４つの情報）を２ビットで表せるＱＰＳＫ（Quadrature Phase Shift Keying）という方式があります。
ＱＰＳＫは、日本語で直交位相変調と呼ばれます。
これだと、00、01、10、11の４つの値を送受信できるわけで、ＢＰＳＫの情報量の２倍あります。
ＢＰＳＫが、搬送波の２つの位相を変化させたのに対して、ＱＰＳＫでは４つの位相を変化させる４相の変調を行っています。
ＢＰＳＫは、０°と１８０°の２つの位相を用いるのに対して、ＱＰＳＫは、＋４５°、−４５°、＋１３５°、及び、−１３５°の４つの位相を用います。
ｘ方向（水平方向）はＩ軸（同相成分）、ｙ方向（垂直方向）はＱ軸（直交成分）として表現した図を位相図と言います。
位相に変化がない０度ならば、ｘの値は振幅になり、ｙの値は０になるはずです。
この後、時計とは逆回りに位相を変化させてみましょう。
ここで、原点からの距離が振幅、Ｉ軸を回転させた分の角度が位相です。
位相を４５°ずつ変化させながら回転させていきます。１回転します。
この時、Ｉ軸（同相成分）とＱ軸（直交成分）の上には点を設けず、４５°刻みの間の部分だけ点を置きます。
こうすると、円周上に４つの点がプロットされます。
このような位相図から星座が連想されることから、Ｉ軸（同相成分）とＱ軸（直交成分）として信号を表したものをコンスタレーション（constellation）と言います。
これらの点をコンスタレーション・ポイントと言い、一つ一つの信号を表します。
これらのコンスタレーション・ポイントが、前述のＱＰＳＫにおける２ビットで構成された４つの値（00、01、10、11）になります。
位相で言うと、＋４５°、−４５°、＋１３５°、及び、−１３５°の４つの位相（４相）になります。
これらの位相角に前述の２進数の数値（00、01、10、11）を当てはめると以下のようになります。
＋ ４５°＝00
− ４５°＝01
＋１３５°＝10
−１３５°＝11
ＱＰＳＫを位相図として表すと以下のような図になります。
(図１) ＱＰＳＫの位相図
御覧のように上の図１を見ると、ＱＰＳＫでは、４つのコンスタレーション・ポイントのそれぞれの間の位相差が９０°あることがわかります。
これらのデジタル位相変調方式は、IEEE802.11gやIEEE802.11aなどの無線ＬＡＮ規格で使用されています。
通信速度の理論値が５４ＭｂｐｓのIEEE802.11gやIEEE802.11aでは、ＯＦＤＭ（Orthogonal Frequency Division Multiplexing）という伝送方式が使用されています。
ＯＦＤＭでは、多数の搬送波をまとめて並列に送信し、送信前にそれぞれの搬送波を変調します。
無線ＬＡＮの場合、変調する際、通信速度によっていろいろな方式が使用されます。
通信速度が５４Ｍｂｐｓと４８Ｍｂｐｓでは６４ＱＡＭ、３６Ｍｂｐｓと２４Ｍｂｐｓでは１６ＱＡＭ、１８Ｍｂｐｓと１２ＭｂｐｓではＱＰＳＫ、最も遅い９Ｍｂｐｓと６ＭｂｐｓではＢＰＳＫが使用されます。
無線ＬＡＮ以外には、デジタル放送や携帯電話にも使用されています。
ＱＰＳＫは、ＣＳデジタルのようなデジタル衛星放送や地デジ（地上デジタル）におけるキャリア変調方式の一つとして使用されています。
