ネットワーク技術用語集【ＱＡＭ】（「ＬＡＮ技術研究室」付録）

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Ｑ

ＱＡＭ

デジタル変調の変調方式は、デジタル情報を乗せる対象によって幾つかに分かれます。
対象が、搬送波（キャリア）の振幅だったり、周波数だったり、位相だったりします。
振幅の場合はＡＳＫ（Amplitude Shift Keying）という方式があり、位相の場合はＰＳＫ（Phase Shift Keying）という方式があります。
このＰＳＫは、ＱＰＳＫや８ＰＳＫなど、幾つかの種類に分かれます。
何れも位相を情報に置き換えて表現できますが、数値の最大値、つまりビット幅に限度があります。
つまり、ビット幅が２ビットだったＱＰＳＫと比べて３ビットにビット幅を広げた８ＰＳＫにすれば、多くのデジタルデータを送信できることになりますが、これよりさらに大量のデジタル情報を効率的に送信したい場合は、さらに工夫が必要となります。
ＱＰＳＫや８ＰＳＫより送信する情報をさらに多くするためには、搬送波の位相や振幅の変動をいっそう細かくする必要があります。
ただし、受信側は搬送波の変動を検知するために、いっそう高い精度が要求されます。
そこで、ＱＰＳＫや８ＰＳＫのように位相変動だけではなく、前述のＱＰＳＫと呼ばれる直交位相変調に振幅の変化も加えたデジタル変調方式がＱＡＭ（Quadrature Amplitude Modulation）です。
これは、日本語で直交振幅変調と呼ばれます。
ＱＡＭは、搬送波の位相と振幅の両方を使用して情報を送信します。
そのため、送信する情報を多くすることが可能となります。
ＱＡＭには、送受信できる情報量の違いから、１６ＱＡＭ、３２ＱＡＭ、６４ＱＡＭ、２５６ＱＡＭなどがあります。
１６ＱＡＭでは、振幅の変化が２段階になり、１６個の値を表現できるため、１６通りの情報を送受信できます。
ＱＰＳＫが４つの値、８ＰＳＫが８つの値であるのと比べるとだいぶ情報量が多くなります。
さらに、振幅の変化を４段階にすると、コンスタレーション・ポイントの数が６４個にもなり、６４ＱＡＭになります。
これだと６４通りの情報を送受信できるようになります。
コンスタレーション・ポイントに関しては、ＱＰＳＫを参照して下さい。
さらに、振幅の変化を８段階にすると、コンスタレーション・ポイントの数が２５６個にもなり、２５６ＱＡＭになります。
これだと２５６通りの情報を送受信できるようになります。
実際には、ＱＡＭの中では、当サイト（ＬＡＮ技術研究室）の管理人であるケロ丸が知る限り１６ＱＡＭと６４ＱＡＭが利用されているようです。
これらのデジタル変調方式は、IEEE802.11gやIEEE802.11aなどの無線ＬＡＮ規格で使用されています。
通信速度の理論値が５４ＭｂｐｓのIEEE802.11gやIEEE802.11aでは、ＯＦＤＭ（Orthogonal Frequency Division Multiplexing）という伝送方式が使用されています。
ＯＦＤＭでは、多数の搬送波をまとめて並列に送信し、送信前にそれぞれの搬送波を変調します。
無線ＬＡＮの場合、変調する際、通信速度によっていろいろな方式が使用されます。
通信速度が５４Ｍｂｐｓと４８Ｍｂｐｓでは６４ＱＡＭ、３６Ｍｂｐｓと２４Ｍｂｐｓでは１６ＱＡＭ、１８Ｍｂｐｓと１２ＭｂｐｓではＱＰＳＫ、最も遅い９Ｍｂｐｓと６ＭｂｐｓではＢＰＳＫが使用されます。
無線ＬＡＮ以外には、デジタル放送にも使用されています。
６４ＱＡＭは、デジタルＣＡＴＶでも利用されていますし、ＱＰＳＫ、１６ＱＡＭ、６４ＱＡＭなどは、地デジ（地上デジタル放送）で利用されています。
その内、ＱＰＳＫや１６ＱＡＭでは、表現できる数値が小さいですが、位相の数も少なく、コンスタレーション・ポイントがまばらで間隔が開いていて、ノイズなどの障害に強いため、自動車や携帯電話などのような移動中の受信に向いています。
そこで、ワンセグのような移動体通信向けの地上デジタル放送サービスで利用されています。
一方、６４ＱＡＭでは、ビット幅が大きいため、表現できる数値が大きく、いろいろな情報を表現できます。
そのため、ハイビジョン放送の伝送にも向いているため、固定受信機向けのサービスに利用されています。