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LANの初歩

1000 BASE-Tの符号化方式

以前、NICNetwork Interface Card)の仕組みのページで、イーサーネット物理層の構造について図解しました。
1000 BASE-Tのようなギガビットイーサーネットでも物理層の構造は同じなので、もう一度図解します。
ネットワークインターフェイスの部分は、OSI参照モデルにおけるレイヤ1の物理層Physical Layer)に相当します。
物理層は、よくPHYと呼ばれます。
PHYは、ファイと読み、PHYチップは、PHYsical Layer Chipの頭3文字を取った略語です。
PHYに関しては、ケーブルに最も近い部分をスタックの底と見ると、以下のように機能別に下から積み上げられた感じで3つに分類することができます。

データリンク層MAC副層のみ)
PCSPhysical Coding Sublayer
PMAPhysical Medium Attachment
PMDPhysical Medium Dependent

一番上のピンク色のMAC副層は、PHYには含まれず、データリンク層に含まれます。
MAC副層では、MACフレームが生成されます。
PHYは、下から見て3つの層に分かれています。
つまり、下から3つ分がイーサーネット物理層に相当します。
MACフレームを作り出すMAC副層のすぐ下のPCSPhysical Coding Sublayer)は、物理符号化副層と言い、MACフレームを符号化する処理を行います。
その下のPMAPhysical Medium Attachment)は、物理媒体接続部と言い、データの送信前はシリアル変換し、受信後はパラレル変換します。
一番下のPMDPhysical Medium Dependent)は、物理媒体依存部と言い、送信前に信号波形変換を行ったり、受信後に信号の増幅を行ったりします。
一番下の肌色の部分(PMD)が最もケーブルに近い部分です。
ネットワークインターフェイスの部分は、電気信号が入ってくる方向(上の表中の矢印【】の方向)から順に説明すると、RJ-45コネクタ、LANパルス・トランスPHYから構成されています。
この図から1000 BASE-Tの符号化方式について説明します。
100 BASE-TXのようなファーストイーサーネットは、PHYの構造上ギガビットイーサーネットと変わりありませんが、信号符号化方式やデータ符号化方式が異なります。
100 BASE-TXでは、信号符号化方式にMLT-3(Multi Level Transmission-3)、データ符号化方式に4B/5Bを採用していました。
100 BASE-TXの符号化方式に関する詳細は、以下のページで参照できます。

10 BASE-T100 BASE-TXの信号符号化方式

一方、1000 BASE-Tでは、信号符号化方式に4D-PAM5、データ符号化方式に8B/1Q4を採用しています。

今、データをどこかへ伝送する場合を例に考えることにします。
1000 BASE-Tで使われているカテゴリ5eUTPケーブルを使用することにします。
上の表を御覧下さい。
ネットワークプログラムは、データリンク層以上の階層で伝送するデータの準備をします。
そして、物理層の上にあるMAC副層から8ビットのデータをPCSが受け取ります。
PCSでは、8B/1Q4というデータ符号化方式を利用して、上位層から受け取った8ビットのビット幅のデータを5値4組の符号に変換します。
8B/1Q4は、8 binary to 1 quinary 4 のことで、2進数8桁の符号を5進数4桁に変換するデータ符号化方式です。
この5進数4桁の符号が5値4組の符号に相当します。
この5つの値は、物理的には5段階の電圧を表しています。
4組の方は、UTPケーブルに含まれる4対の撚り対線と対応しています。
2進数8桁の符号では、2の8乗=256個の数値を表すことができ、これをデータとして送信するために、5進数4桁の符号に変換することで、5の4乗=625個の数値を表現できるようになります。
これによって、誤り検出用のビットを1ビット加えて9ビットのデータで送受信できるようになります。
この9ビットになったデータは、5値4組の数値に変換されます。
5値とは、具体的に10進数で示すと、-2,-1,0,+1,+2 のことです。
続いて、PMAでは、PCSPhysical Coding Sublayer)と呼ばれる物理符号化副層から5値4組の符号を受け取ります。
4D-PAM5は、4 dimensional-phase amplitude modulation 5 の略で、フォーディーパムファイブと読みます。
4D-PAM5は、PMAPhysical Medium Attachment)と呼ばれる物理媒体接続部を担当する符号化方式です。
1000 BASE-Tは、4対8本の銅線のケーブルをフルに使用します。
1000 BASE-Tでは、ファーストイーサーネットイーサーネットでは未使用だった4本の銅線(2対分)も通信に利用されています。
実際に伝送する時、5段階の電圧で4対8本の銅線のケーブルに電気信号を同時に流します。
伝送速度は1対につき250Mbpsで、合計して1000Mbps(1Gbps)です。
これが1000 BASE-Tギガビットイーサーネットです。
4D-PAM5という信号符号化方式では、8ビットのデータを1クロックで表現します。
クロック信号は、同期を取るための周期的なパルス信号を言います。
同期を取るとは、タイミングを合わせることを言います。
クロック信号は、クロックとか、クロックパルスとも言います。
パルスという言葉には、英語の辞書では「鼓動」、「脈打つこと」、「波動」、「振動」という意味があります。
従って、心臓の鼓動もパルスです。
電気関連の用語としてわかりやすく簡単に言ってしまうと、パルスとは、非常に短い時間に流れた後、ちょっとの間お休みとなる電流のことを言います。
しかし、このようにたった1回とは限らず、瞬間的に電流が流れて、その後ちょっと休みがある周期を繰り返す場合もあります。
まさに、脈打つ感じですよね。
1と0(オンとオフ)のデジタル信号が以下の図のようになれば、パルス信号になります。


パルス信号


一番上の図では、パルス信号は、1と0(オンとオフ)が1回だけですが、その下の図では周期的に繰り返されています。
例えば、10101010とか100010001000などのように繰り返されてもパルス信号です。
0(オフ)が少々長くなってもパルス信号です。
ただし、1が連続したまま(オンのまま)のデジタル信号パルス信号ではありません。
上の図の矢印の間をパルス間隔と言います。
パルスについてはおわかり頂けたでしょうか。
コンピュータなどのデジタル機器を動作させるために、クロックが必要です。
デジタル機器には、クロックを発振するために水晶振動子を使用した回路があります。

さて、少し横道にそれたので、4D-PAM5の説明に戻ります。
4D-PAM5とは、4組5値のパルス振幅変調を言います。
こうしてできたパルス信号は、この後PMDPhysical Medium Dependent)と呼ばれる物理媒体依存部に渡され、電気信号または光に変換され、ケーブルに流れていきます。
1000 BASE-Tの場合は、UTPケーブルに流すので、電気信号になります。
送信の場合だけ書きましたが、受信の場合はこれまで書いた流れとは逆のことを行っているだけです。

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